ポケット心理学 〜明日使える心理学豆知識〜

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共 依 存
夫の激しい暴力にも関わらず、逃げることなくじっと耐える妻。

一昔前なら、「家庭内の問題だから」とタッチされず、

多くの女性が苦しんでいたわけですが、

最近になってやっと日本でもドメスティック・バイオレンス(DV)

という言葉で社会問題化してきています。


ところで、このような事がどうしてまかり通ってきたのでしょうか?


一つ目の理由として、男尊女卑という古い考え方から、

世間が見てみぬフリをし続けたという原因が考えられます。


そしてもう一つ、「共依存」という心理がキーワードになります。


共依存という言葉は、1970年代アメリカのアルコール依存症の治療現場で生まれました。


ここで、ちょっとアルコール依存症について考えてもらいたいのですが、

アルコール依存症になると、自分の周りの事を全くできなくなってしまうわけです。


もちろんまともに働くことすらできなくなるわけですから、

収入もほとんどないはずです。


しかし、酒を買うのにはお金が必要です。


では、そのお金はどこから生まれるのか?


・・・


それは周囲の家族からもらっているに違いないはずです。


本当にアルコール依存症を断ち切ってもらいたいなら、

手助けをする事は決して行ってはならないはずです。


「これだけ飲んだら酒は絶対やめるから」


という言葉を投げかけられると、嘘だと分かっていても、

手を貸してしまうのです。


アルコール依存症はこのように、依存症に陥った本人だけでなく、

周囲の家族が手助けをしてしまうなどの問題がある場合が少なくありません。


お酒をやめてほしいはずの家族が、

結果的にはそれを助長している不可解な現象。


これが共依存という言葉が生まれるきっかけとなりました。


《誰かに必要とされるために》

共依存に陥る者のほとんどは、

「誰かに自分を必要とされる」事だけが生きる目的になっています。


そのため、他人から批判されるという事は、

自分自身の存在価値を脅かす事につながるため、

自分の気持ちを無視してまで、

周囲の人間の期待を常に裏切らないような行動をとってしまいます。


それと同時に、共依存に陥ると、自分自身への評価が極端に低くなり、

「自分は何をやってもダメな人間だ」と思い込みます。


そこへ追い討ちをかけるように、夫の絶え間ない暴力が続くのです。


その結果、夫の暴力から逃げる気力すら失われる「学習性無力感」へと突入してしまうのです。

(参考までに→過去の記事)


そしてついには、夫の暴力がエスカレートしてゆき、悲劇的な結末へと向かってしまいます。


ところで、共依存関係にある夫婦は、

夫の暴力が始まってから依存しあう関係になったのではありません。


二人は出会った時からすでに、お互いに依存しあう関係としてスタートしているのです。


例えば、付き合いだした頃、彼女は、彼が多額の借金をしていると分かり

できるだけ解決してあげたいと思います。


彼も彼女に自分の問題を助けてもらいたいと思うわけですが、

ここでもし、仮に彼女が自分の借金を全て返済してしまうと、

そこでこの「助ける・助けられる」という関係は終わってしまいます。


その時、彼の中では、今の彼女との関係を崩したくないという心理がはたらきます。


その結果、また何かの理由を見つけては借金を繰り返してしまいます。


そして彼女の方でも、もし自分がこの問題を解決してしまうと

彼女との関係が終わってしまうのではないかという不安から、

彼がまた借金をしてきても、彼女は怒る素振りをたとえ見せても、

仕方ないなと思い、「彼には私がいないとだめなんだ」と強く

思うようになります。


つまりは、自分の献身的な行動が裏切られるということを期待している、

そういう複雑なカラミがあるわけです。


そして、更にその奥深くには、お互いが助けたり、

助けられてもワザと失敗したりと、

相手の行動をコントロールしたいという欲求が見え隠れします。


そしてこの、コントロールしたいという欲求こそが、

共依存のウラの顔ともいえます。


その欲求は、自分でも気がつかない自分本位の考え方へとつながっていくのです。


《共依存の子供の将来は?》

このように、共依存に陥ると知らず知らずのうちに

自分が相手をコントロールしたいという欲求が現れます。


そして、その欲求を確実に満たすために、矛先が自分達の子供へと向かいます。


はっきりとした形では、子供に対する虐待として現れるのですが、

もう一つ、親の『ペット』として子供の将来がコントロールされるという、

一目ではわからない問題も生じます。


例えば、子供がよく勉強できるとします。


親にしてみれば、将来はいい大学に入って、安定した職業についてと思うのが

当然かもしれません。


しかし、そこで共依存に陥った親は、

見えない過剰な「期待」をかけて子供をがんじがらめにしてしまいます。


子供にしてみれば本当は遊びたいが、そんな素振りを見せるとため息をつかれたり、

怒られたりするかもしれない。


そんな嫌な思いをする位なら、我慢して勉強しよう。


と親の期待に添うような方向へ行動してしまうのです。


親はそんな「頑張る子供」を見て、ますます「応援しなくては!」と思い、

子供を塾に入れたり、習い事をさせたり、自分の時間を削ってまで子供のために

費やそうとします。


そして、子供は更に親の期待を背負い込んでしまいます。


しかし、親には自分が子供をコントロールしているという認識は全くありません。


ですから、親子の間には温度差が生まれます。


子供は大きくなるにつれ、自分がしたい事を我慢して、

親の期待にこたえようとしている事に気がつくことがあります。


そんなとき、今まで親に従順で、「よくデキる子」が急に親に反抗して、

手のつけられない状況になるのです。


しかし、親にしてみれば、子供のために一生懸命頑張って尽くしてきたのに、

何で突然反抗されるんだ。という裏切られた気持ちになります。


そこには、自分が今まで子供をロボットのようにコントロールしてきたという意識は
ありません。


そこで、悩み苦しむ結果となります。


《共依存から抜け出すには?》

共依存という言葉は比較的新しい言葉ですが、

「もちつもたれつ」というように、

共依存の状況自体はずっと存在していました。


そのため、自分がそんな状態にあるということに気が付かない人がほとんどです。


ですから、まずはこの自分の今の状態を抜け出したいと思うなら、

似たような状況の人と知り合って、自分が共依存であるということを、

客観的に気がつくことが必要です。


おそらくそのような方法としては、

専門の場所に相談しにいくなどするのが一番よいかと思います。



一人で苦しむのではなく、誰かに思いを聞いてもらう、まずはそこから始めてみてください。


参考図書

「恋愛依存症―失われた愛情と心の傷を癒す」
「依存と虐待」
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